コミュニティ維持で問題となる共有地の悲劇(コモンズの悲劇)は「コモンズの統治」で対策する。分かりやすい説明を書いた

投稿日:2019年4月4日
更新日:

コモンズの統治アイキャッチ画像

オープンアクセスの地で利己的な行動により資源が枯渇し、結果としてみんなが不利益を被ると言われている「共有地の悲劇(コモンズの悲劇)」

悲劇を生まないようにする基本的な対策は「管理する」です。管理方法としては次の3つがあります。

  1. 政府が管理する
  2. 私有化して管理する
  3. 自分たちで管理する(コモンズの統治)

この記事は、自分たちで共有地の悲劇を対策する方法「コモンズの統治(Governing the Commons)」について分かりやすく伝えたいと思い書きました。

おおまかな説明の流れ

  1. 人は利己的です。コミュニティは一部の人によって維持が困難になります(共有地の悲劇)
  2. しかし一定のデザイン設計下においては、人は集団の利益を優先するようになります(コモンズの統治)

Commons : 誰の所有にも属さない放牧地(⇒ 共有地※ローカルなコモンズとグローバルなコモンズの2方向の解釈で話が分かれる)

3つの対策の歴史的な流れ

過去の経済学では、次の二つを管理方法として考えてきました。

  1. 政府管理
  2. 私有化

人間は利己的なんだよという通説に基づいた内容です(例:アダム・スミス:神の見えざる手

そんな中、共有地のままで管理するのが最も効果的だとして3つ目の考え方が示されました。それが、2009年ノーベル経済学賞に選ばれた「コモンズの統治です

正式名

コモンズの統治:集団行動のための制度の進化(Governing the Commons: the Evolution of Institutions for Collective Action)1990年

残念ながら邦訳がありません(2019年3月末時点)

ここが凄いよ、コモンズの統治!

コモンズの統治は、「共有地を共有地のままで管理できるよ」という内容です。

コモンズの統治を知ることで枠のある共有地を自分たちで維持していく具体的な方法が分かるようになります。例えばコミュニティやサービスを維持していく為のモデル設計に活かしたり。

何が凄いって、一人の利己で共有地が滅ぶと考えられてきた中、データを説き結果として人間の可能性を見出した点。まさに感服の一言です。

共有地の維持に不可欠な8つの設計原理

まずコモンズの統治を発表したオストロムと共同研究者は、共有地を維持するのに不可欠と思われる8つの設計原理を世界中の膨大なデータから見出しました。

Design principles illustrated by long-enduring CPR institution

  1. Clearly defined boundaries
  2. Congruence between appropriation and provision rules and local conditions
  3. Collective-choice arrangements
  4. Monitoring
  5. Graduated sanctions
  6. Conflict-resolution mechanisms
  7. Minimal recognition of rights to organize
  8. Nested enterprises

Governing the Commons(コモンズの統治)は正式な日本語訳がないため、以下はウィキペディアから引用したその設計原理

境界:CPRから資源を引き出す個人もしくはその家計とCPRの境界が明確である。
地域的条件との調和:専有ルールが供給ルールと調和している。
集合的選択の取り決め:運用ルールの影響を受ける個人の大多数は、運用ルールの修正に参加できる。
監視:CPR条件と専有者を検査する監視者は、専有者に対して責任がある。
段階的制裁:運用ルールを侵害する専有者は制裁を受ける。
紛争解決:専有者間もしくは専有者と当局者の紛争を解決するために、安価な費用の地方領域に接する。
組織化する権利の承認:制度を構築する専有者の権利は、外部の政府当局によって異議を申し立てられない。
組み込まれた事業:より大きな体系の一部であるCPRsに関しては、専有、供給、監視、強制、紛争解決ルールは多層の事業で組織化される。

WIkipedia: エリノア・オストロム

む・・・難しくないですか?

原文どころか、Wikipediaですら難しかったので「限界費用ゼロ社会」という本から参考にし設計原理を噛み砕いたのが以下の内容

共有地の維持に不可欠な設計原理

  1. 共有地を使用できる者と、できない者との明確な境界(組合員と非組合員)
  2. 組合員が使用できる量の規則と、使用するために負担する量の規則
  3. 共同で民主的に規則を決定し、規則は経年に伴う修正の保証が必要
  4. 監視役を組合から選出する
  5. 規則を守らない者への段階的な罰則
  6. トラブルに低コストかつ迅速に利用できる調停システムの組み入れ
  7. 組合のルールを政府が容認する(大事)

以上の設計原理により、共有地は悲劇にならず、共有地のままで管理できていたことが分かりました。

オストロムは人の可能性を見出した

書かれている設計原理は、共有地に関する事例を1000年の期間で網羅し調査した結果で、さらに日本などを含めた世界中で同じ原理が見られた上に、外界と接触せず孤立したコミュニティでも類似の管理モデルがいくつも存在していました。

それはつまり人間の普遍的な原理による働きが結びついているのでは?と考えられ、そこから実験を経て導き出された行動結果が次の2つ

  1. 人は、互いのコミュニケーションなく単独かつ匿名で決断を下さなければならない場合は、資源を過剰利用する
  2. 公然でコミュニケーションできる場合、資源の過剰利用は劇的に減る

「ルールを破り得られる大きな利益」 < 「お互いが小さな罰則をもとにコミュニケーションで監視しあう事」の結果です。

この結果はそれまでの学者達からすると衝撃の内容でした。

なぜなら学問のベースに「人は自分のために行動するよ、それが社会に良いよ」という考えがあったので、集団利益に自らが進んでいく状態はとうてい受け入れがたいことだったからです。

悲劇は起こるから「最良は市場の管理である」と通説のように語られてきた中で、「人は集団で最良の選択ができる」という一石が投じられ、影響を上書きした点で大きな視点転換を果たしたのが「コモンズの統治」です。

絶対ではない設計原理

8つの原理は「不可欠」とされていますので、満たせない場合は、遅かれ早かれなところがあります。

そして「コモンズの統治」は共有地の悲劇を避ける一つの方法ですが、多くの研究者はその範囲をローカル・コモンズである小さめのコミュニティに限定しています(たとえば、森林、漁場、河川・・シェアハウスの冷蔵庫の中身など)

設計原理を何かの事例に割り当てる="必ず共有地が維持できる"とも限りません。現実はもっと複雑ですし、共有地に関する事例の中には失敗モデルもあります。外部要因も、内部要因もあります。

 

後にも先にも、必ず話し合いのもとでモデル設計に活かしましょう!きっとコミュニティ維持の大きな助けになります。

関連する人物たち

ギャレット・ハーディン(Garrett Hardin)

ギャレット・ハーディン(Garrett Hardin、 1915年4月21日 - 2003年9月14日)は、テキサス州ダラス出身のアメリカの生物学者である。1963年から1978年まで、カリフォルニア大学サンタバーバラ校で生態学の教授を務めた。 1968年に「共有地(コモンズ)の悲劇」をサイエンス誌に投稿し、資源管理の必要性を問題提起した。 

Wikipedia: ギャレット・ハーディン

「共有地の悲劇」を1968年にサイエンス誌に投稿した人物です。彼の投稿がきっかけとなりコモンズ議論が51年前から始った(2019年現在)

彼の発表は、共有地(オープンアクセス)をロイドの例えになぞらえて拡大解釈して説明していたことから、「コモンズの誤読や誤用」と指摘されている。

良くも悪くも、彼をきっかけにしてコモンズと言う言葉の範囲が漠然と使われる状況に繋がりました。それだけ世間のどこでも起こりそうな事の比喩としてただ使いやすい表現と言える。

提起したハーディンは「グローバルなコモンズ」の意を取っていたので対応方法は「中央集権化した政府による管理しかないよ」というポジション(しかしこのポジションも、人種差別的な方向性に主張を持っていくための思惑があると言われています。)

エリノア・オストロム(Elinor Ostrom)

「コモンズの統治」を発表した女性初のノーベル賞受賞者

ゲーム理論を駆使し、なんやかんやと活躍したコモンズ論のオピニオンリーダーでした。

ウィリアム・フォースター・ロイド(William Forster Lloyd)

最初の起源まで遡ると、ウィリアム・フォースター・ロイド(William Forster Lloyd)にたどり着く。彼の発言を参考にしたのが、共有地の悲劇を提起したハーディン。

 

現在も、気候変動や情報社会の大きな2テーマに対してコモンズ論ないしコモンズの枠を飛び越えて世界中で議論されています。

例えば最近、人間の高い文明を生み出した要因の一つに「他者への共感」があると論じられている話がありました。

これは進化ゲーム理論を用いてシミュレートされた結果で、地域差のある相対的な"道徳感"を理解する「共感」によって人は社会を発展させたという話でした。

オストロムが人の可能性を説き続けたことにもつながるような発表に思えて興味深かったです。

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